RESEARCH

検出器R&D

次世代の粒子検出器を
つくる

素粒子物理の新しい発見は、 自然を見る新しい方法から始まります。 私の研究では、ピクセル型読み出しの新しいコンセプトから 大型液体アルゴン検出器まで、 将来のニュートリノ実験を支える 次世代の検出器技術を開発しています。

CERNで行われたピクセル型Charge Readout Planeの設置作業

検出器コンセプトから、実際のハードウェアへ。 CERN Neutrino Platformでのコールドボックス試験に向けた、 ピクセル型Charge Readout Plane(CRP)の設置作業。

LIQUID ARGON READOUT

投影型ワイヤー読み出しから、ピクセルへ

TRADITIONAL LArTPCs

2次元の情報から、3次元を再構成する

液体アルゴン時間投影型検出器(LArTPC)の中を 荷電粒子が通過すると、その軌跡に沿って アルゴン原子が電離し、電子が生まれます。 電場をかけることで、これらの電子を 検出器の読み出し面まで移動させます。

多くの大型液体アルゴン検出器では、 平行に張られたワイヤーの面を使って この電荷を読み出します。 それぞれのワイヤー面は異なる角度から事象を観測するため、 粒子の飛跡を異なる2次元投影として記録します。

複数のワイヤー面で得られた信号と、 電子が移動する時間の情報を組み合わせることで、 もとの3次元の粒子軌跡を再構成することができます。

液体アルゴンTPCで用いられるワイヤー型Anode Plane Assembly
複数のワイヤー層から構成される Anode Plane Assembly(APA)。 それぞれのワイヤー面が、粒子反応を異なる方向から観測します。

THE CHALLENGE

2次元の投影だけでは、曖昧さが生まれる

投影型ワイヤー読み出しは非常に優れた技術ですが、 一つ重要な制約があります。 検出器が電荷の完全な3次元位置を 直接測定しているわけではない、という点です。

そのため再構成の際には、 異なるワイヤー面で見えている信号のうち、 どれとどれが同じ粒子に対応しているのかを 判断する必要があります。 単純な飛跡であれば比較的容易ですが、 多数の粒子や重なり合った飛跡、 小さな低エネルギー信号が含まれる事象では、 異なる3次元構造が似た2次元投影を作ることがあります。

こうした曖昧さは、 複雑な事象や低エネルギー事象を 正確に再構成するうえで大きな課題になります。

投影型ワイヤー読み出しで生じる再構成の曖昧さを示す図
投影型ワイヤー読み出しでは、 異なる3次元の電荷分布が似た2次元投影を作ることがあります。 再構成では、それぞれのワイヤー面で得られた信号を 正しく対応づける必要があります。

PIXELATED READOUT

粒子反応を、直接3次元で測る

液体アルゴンTPCのピクセル型電荷読み出しを示す図
ピクセル型読み出しでは、 個々の電荷が読み出し面のどこに到達したかを直接測定するため、 複数のワイヤー投影を対応づける必要がありません。

ピクセル型読み出しでは、 長いワイヤーの代わりに、 読み出し面を多数の小さな独立したピクセルに分割します。 それぞれのピクセルが電荷の到達位置を記録し、 電子のドリフト時間からもう一つの座標を得ることで、 粒子反応を直接3次元で捉えることができます。

この方法は特に、 小さな信号や複数の飛跡が重なるような 複雑・低エネルギー事象に有効です。 こうしたピクセル型読み出しを 液体アルゴン検出器でどのように実現するかは、 私の研究を通じた大きなテーマのひとつです。

Q-Pix

博士研究 · HARVARD UNIVERSITY

Q-Pix:ピクセル型読み出しへの新しいアプローチ

ハーバード大学での博士課程では、 このピクセル型読み出しを実現する一つの方法として、 液体アルゴンTPCのために設計された 新しい読み出しアーキテクチャ Q-Pixを研究しました。

Q-Pixでは、 従来の読み出しシステムのように すべての信号を連続的に収集するのではなく、 各ピクセルが独立して動作し、 電荷が到達したタイミングをそれぞれ記録します。 この方式によって、 非常に小さなエネルギーの信号への感度を保ちながら、 高精細な三次元イメージングを目指します。

私の博士研究では、 「このような検出器があれば、 どのような新しい物理が可能になるのか」 という問いに取り組みました。 検出器シミュレーションと事象再構成を用いて、 太陽ニュートリノと 重力崩壊型超新星ニュートリノに対する Q-Pixの感度を研究しました。

この研究を通して、 新しい検出器設計と、 それによって可能になるニュートリノ物理を 直接つなげることを目指しました。

論文を読む →

FROM CONCEPT TO HARDWARE

Pixelated Charge Readout Plane (CRP)

現在の私のピクセル型読み出し研究は、 検出器コンセプトの研究から、 大型検出器で使える実際のハードウェア開発へと進んでいます。 ローレンス・バークレー国立研究所では、 LArPix読み出しシステムを用いた ピクセル型Charge Readout Plane(CRP)の 開発に取り組んでいます。

このプロジェクトでは、 将来の大型液体アルゴン検出器に必要なスケールで、 ピクセル型読み出しをどのように実現できるかを研究しています。 多数のピクセルと極低温エレクトロニクスを ひとつの信頼できる検出器システムとして動作させる必要があり、 シミュレーション上でコンセプトを研究するのとは また異なる難しさがあります。

私は、 検出器の組み立て、 エレクトロニクスの統合、 システムコミッショニング、 ソフトウェア開発、 そして性能評価などに携わり、 ピクセル型液体アルゴン読み出しを アイデアから実際に動く検出器技術へと 発展させる研究を進めています。

Pixelated Charge Readout Plane

LOOKING AHEAD

これからの問いに応える検出器をつくる

次世代のニュートリノ実験では、 より大規模で、より精密な測定が可能であり、 さらに微弱な信号まで捉えられる検出器が求められます。 その実現には、 検出器そのものの設計だけではなく、 エレクトロニクス、読み出し、 事象再構成、 そして大規模なシステム統合まで、 幅広い技術の進歩が必要です。

私はこれからも、 新しい検出器コンセプトを考えるところから、 実際にハードウェアをつくり、 コミッショニングし、 最終的にそれを物理に使うところまで、 その境界をまたぐ研究を続けていきたいと考えています。 検出器開発を、 私たちが答えたい科学の問いと密接につなげることで、 ニュートリノ反応をこれまでとは違う形で 「見る」ことのできる検出器をつくることが目標です。

EXPLORE MORE

関連する研究・活動